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夜間飛行便

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

夜間飛行便(やかんひこうびん)とは、夜間に出発する飛行機便のこと。夜行便。午前0時以降の深夜に出発するものは深夜便(しんやびん)、早朝に出発するものは早朝便(そうちょうびん)とも呼ばれる[1][2][3]

夜間飛行とは、夜間に行なう飛行を意味し[4]、夜間とは、日本の航空法によれば、日没から日出までの間をいう[5]

各地の例

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日本

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郵便機

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航空機による郵便輸送(郵便機)は1929年(昭和4年)に制度化され、1933年(昭和8年)には東京―大阪間での夜間航空便も開始された[6]。深夜便は1953年(昭和28年)、全日空の前身である2つの航空会社により、東京・大阪間の郵便貨物専用便の運航により開始される[7]。その後、夜間航空便は1974年(昭和49年)に廃止された[6]

国内線旅客機

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国内線の旅客機では、1957(昭和32)年7月20日、日本航空が東京―札幌間に深夜便「オーロラ」の定期運行(7月20日から8月20日まで)を開始する[8][9]。往路は深夜1時に東京を出発し3時間後の早朝4時に札幌に到着、復路は深夜1時30分に札幌を出発し羽田に4時30分に到着するというダイヤで、機材はプロペラ機のダグラス DC-4が使用された[10]。運賃は昼間便が大人片道11700円だったのに対し、深夜便は15パーセント安い9950円で販売された(なお1960年当時の大卒の初任給は13000円前後だった)[11]

「オーロラ」の好評を受け、日本航空は1960(昭和35)年6月22日から東京―福岡間を結ぶ「ムーンライト」を開設した[11]。往路は深夜1時30分に東京を出発し早朝5時10分に福岡に到着、復路は深夜1時40分に福岡を出発し早朝4時50分に東京に到着するというダイヤだった[11]。当初は夏期3か月限定の予定だったが、運賃が通常12600円に対し8900円と割り引いたこともあり、需要の多さから年間通して運行することになった[11]。1961年10月からは大阪を経由する便を増便した[11]

1968年(昭和43年)には日本航空の機材のジェット化などにより、「オーロラ」「ムーンライト」の運航は日本国内航空に引き継がれ、東京経由の大阪―札幌便が「ポールスター」の愛称で運航が開始された[12]。同年12月にはYS-11による東京―福岡間の直行便、1969年4月には東京―大阪間の深夜便も運航を開始した[12]。1971年(昭和46年)、日本国内航空は東亜航空と合併して東亜国内航空となり、深夜便の運航も引き継がれたが、大阪空港の夜間飛行差し止め訴訟など騒音公害が問題視されるようになり、1日の運行数をじょじょに減らしていき、1974年(昭和49年)9月には札幌便、10月には福岡便が運休し、旅客機の深夜便はすべて廃止された[13]

2012年(平成24年)7月からANAが「ANA ギャラクシーフライト」の名称で、東京(羽田)―沖縄(那覇)間の深夜便を期間限定で運航していた[14][15]

2020年(令和2年)のゴールデンウィーク期間中に、スカイマークが羽田-那覇名古屋(中部)-那覇間において深夜早朝便を設定していたときがある[16]

国際線旅客機

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全日空日本航空香港国際空港から東京国際空港行きの夜行便を運航していたことがあるが、現在では全日空の一便を除き昼行便に振り替えられている。ただ日本行きの夜行便は現在でもキャセイパシフィック航空が運航しており、香港から東京国際空港と関西国際空港に各一便ずつ運航している。

アジア

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香港からは、仁川国際空港行きの夜行便をアシアナ航空大韓航空、キャセイパシフィック航空の三社が、釜山行きをアシアナ航空と香港ドラゴン航空が運航している。キャセイパシフィック航空はこの他香港からオセアニア各国、更に最近ではシンガポールクアラルンプールへの夜行便を運航している。またジャカルタ発香港行きの便や、東南アジアから日本、韓国へ向けた夜行便も多数ある。これらは全て深夜から真夜中にかけて飛び立ち、明け方に目的地に到着する。インドや東南アジアを出発地とする便は、深夜11時から午前1時にかけて離陸し、シンガポール、バンコク、クアラルンプールに翌朝5時から8時30分までに到着する。フィリピン航空もシンガポールとバンコクからマニラ行き、マニラからソウル行きの夜行便を運航している(マニラ-ソウル便はアシアナ航空、大韓航空も運航している)。アシアナ航空、大韓航空はコタキナバルを現地時間の夜更け頃に出発し仁川国際空港に翌朝7時に到着する夜行便も飛ばしている[17][18]。これはマレーシアからの旅行客向けで、韓国到着後丸一日観光できるようにしたもの。この他、日系、韓国系の航空会社は、ホーチミンシティ・クアラルンプール・バンコク・シンガポールから、自国向けの夜行便を運航している。

オーストラリア

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オーストラリア大陸を横断する便の大半は昼行便だが、2010年現在、パースからシドニーブリスベンケアンズキャンベラメルボルン行き、ダーウィンからシドニー、ブリスベン、メルボルン行きの夜行便が出ている。以前はオーストラリアからニュージーランドフィジーへも夜行便が就航していた。また東南アジア各地からオーストラリアへ向けた夜行便も多数運航されている。

ブラジル

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TAM航空ゴル航空共にブラジル国内で夜行便(通称ポルトガル語: Corujãoオオフクロウ便)を運航しており、路線数は50以上にも及ぶ。全便午後10時から早朝6時までの間に出発する[19][20]

ヨーロッパ

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2009年の段階でヨーロッパを夜中に経ち、3時間から6時間かけて、中東・ロシアに夜更け頃に到着する夜行便が幾便かあった。2012年には、カナリア諸島からヨーロッパ本土へ向けての格安の夜行便が就航している。

ロシア

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ロシアでも、アメリカと状況は同じで、モスクワからヤクーツクイルクーツクウラジオストク行きの夜行便が出ている。ロシア国内の大陸横断飛行は5時間から8時間以内に収まってしまうが、高緯度ゆえ、このたった5時間から8時間の飛行で、最大8つもの標準時を跨ぐことになる。結果として深夜帯が大幅に削られることになる。モスクワを午後6時頃に出るとロシア東部には大体翌朝6時頃に到着する。現在の例を挙げれば、アエロフロートのSU783便はモスクワを午後11時05分に出発し、マガダンには約8時間後の翌日午後3時に到着する。

米国・カナダ

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米国とカナダでは西海岸から、中部・東海岸に向けて夜行便が飛んでいる。総じて西海岸を午後10時から夜半にかけて出航し、3時間から5時間かけて目的地へと向かうが、標準時を跨ぐため、2、3時間時計を進めなければならない。従って、到着する頃には既に夜が明け始め、着陸は朝5時から7時頃になる。この他、ハワイアラスカから米国本土の西海岸の主要都市へと向かう夜行便もある。また東京を夜に出て、ホノルルに6時間から7時間後に到着する夜行便もある。[21]

レッドアイ・フライト

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英語では深夜出発して翌朝早くに目的地に到着する旅客機のことを、睡眠不足で充血した目になぞらえて、レッドアイ・フライト(英語: red-eye flight)と呼ぶ[22][23]

夜行便のうち東向きに航路を取るものを特にレッドアイ・フライトと呼ぶことが多い。出発は深夜だが、東行きのため、僅か3時間から5時間で夜が明けてしまう。深夜便にもかかわらず、時差の関係で睡眠時間が削られてしまうので、現地では既に朝なのに目の冴えないまま到着するということが多い。深夜帯に移動を済ませてしまえるので、主に翌日朝から働きたいというビジネス客向けに設定される。

大西洋を横断する、北米からヨーロッパへの便の大半も東行きの夜間飛行となるが、一般にレッドアイ・フライトとは見做されない。大西洋横断便の場合、夕方に出発し、ヨーロッパまで最低でも7時間以上かかる。米国睡眠協会では7時間から9時間の睡眠を理想としており、大西洋横断便であればこの睡眠時間を確保できるためである。

前述の意味に限らず、地球の自転と同じ向き、つまり東向きに飛ぶ深夜便を全てレッドアイと呼ぶこともある。また、標準時を夜間に跨ぐ、跨がないにかかわらず、単に長距離の国際便をレッドアイとすることもある。

経緯

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1930年代ないし1940年代には夜行便の運航は不可能であった。これは深夜運用のための計器を備えた空港がほとんどなかったためで、現在でも、計器を備えていなかったり、騒音を抑えるために運用時間帯が制限されている空港からは夜行便を飛ばすことができない。

脚注

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  1. 午前0時以降に出発する深夜便について”. ANA. 2026年4月13日閲覧。
  2. 国際線|深夜出発の便は、いつの日付で予約すればいいですか。”. JAL. 2026年4月13日閲覧。
  3. 早朝・深夜便 活用ガイド”. Peach Aviation. 2026年4月20日閲覧。
  4. 夜間飛行」『精選版 日本国語大辞典』小学館コトバンクより2026年4月20日閲覧
  5. 航空法”. e-Gov 法令検索. 2026年4月20日閲覧。 “第六十四条 航空機は、夜間(日没から日出までの間をいう。以下同じ。)において航行し、又は夜間において使用される空港等に停留する場合には、国土交通省令で定めるところによりこれを灯火で表示しなければならない。”
  6. 1 2 長谷川 2025, p. 59.
  7. #時刻表にみる日本国内航空の深夜便”. 20世紀時刻表歴史館 - TIMETABLE MUSEUM. 2026年4月13日閲覧。
  8. 『昭和 二万日の全記録 第11巻 技術革新の展開 昭和31年-34年』講談社、1990年3月24日、ISBN 4061943618、142頁
  9. 稲森 2025, pp. 41–42.
  10. 稲森 2025, p. 41.
  11. 1 2 3 4 5 稲森 2025, p. 42.
  12. 1 2 稲森 2025, p. 43.
  13. 稲森 2025, p. 44.
  14. 那覇への出張・旅行に便利!毎年夏に行われるANAのギャラクシーフライトってなに?”. エアトリ (2017年6月8日). 2026年4月20日閲覧。
  15. 東京(羽田)⇔沖縄(那覇)線の深夜・早朝便「ギャラクシーフライト」が始動!”. ANA. 2026年4月20日閲覧。
  16. 2020 年 4 月 29 日(水)~5 月 10 日(日)期間に深夜早朝便を設定”. スカイマーク (2020年2月7日). 2026年4月15日閲覧。
  17. http://www.koreanair.com/local/na/gp/eng/tp/sd/eng_tp_wk.jsp
  18. http://us.flyasiana.com/Global/US/en/homepage?fid=TICKET14000
  19. Gol pede autorizacao permanente para operar voo noturno Folha Online. Retrieved on April 07, 2009.
  20. TAM lanca ofertas corujao a partir de R$ 79,50 Rotas e Trilhas. Retrieved on April 07, 2009.
  21. http://www.alaskaair.com/as/www2/flights/RePrintableTimetable.asp
  22. 【番外編・フィラデルフィア】今更聞けないレッドアイフライト”. 地球の歩き方 (2019年11月9日). 2026年4月13日閲覧。
  23. red-eye」『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』小学館コトバンクより2026年4月13日閲覧

参考文献

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